「冷やかす」の意味と例文
①からかう 軽口や相手を冷やかすようなことばかり言っていると信用をなくすよ。
②店に入っても買わずに見るだけ 新しくできた高級ブランドショップを、人々が冷やかすように覗いて行く。
③冷やす 酢めしを冷やかす

「冷やかす」の語源
江戸時代。吉原の花魁が、浅草の紙すき職人が遊びに来たのを見て「ああ、また冷やかしが来やがった」と言ったのが「冷やかす」の語源。

「冷やかす」の語源について、詳しく知りたい方は、ぜひ続きを読んでみてください。

「冷やかす」の語源は江戸時代の紙すき職人と吉原花魁がルーツ

江戸時代の浅草は和紙の再生地だった

江戸時代。今の浅草付近では使い古した和紙を再生する事業が盛んでした。

和紙は大変高級だったので、何度も再生されていたんですね。

和紙を作る職人を「紙すき」職人と言います。

再生した和紙は「浅草紙」と呼ばれました。

書くための和紙ではなく、鼻紙や落とし紙(トイレットペーパー)として使われていました。

「鼻をかむ紙は上田か浅草か」と言われるくらい、浅草紙の職人のスキルは高かったようです。

浅草紙を作っていた場所は、現在の雷門1丁目辺りです。


江戸時代にも雷門周辺は都市化や観光化が進み、浅草紙の生産地も雷門近辺から、浅草の裏手にあたる山谷に移っていきました。

現在の「紙洗橋」近辺です。

浅草の紙すき職人と吉原花魁の関係

浅草の紙すき職人は、和紙を再生するため、使い古した和紙をちぎって水に漬けていました。

この作業のことを「冷やかし」と言います。

紙を漬ける時間は1日以上だったそうです。

職人は紙をちぎって水に漬けたら、しばらく何もすることがありません。

その暇つぶしに職人たちは、近所にあった吉原に遊びに行っていました。

「紙洗橋」から「吉原大門」まで今なら歩いて6分ほどの距離です。


しかし、紙すき職人は裕福なわけではありません。

吉原に行ってもお金がないので、花魁たちを見て楽しむだけです。

花魁のほうも、紙すき職人がお金を持ってないことを知っていましたので、「また、”冷やかし”が来たよ」と、職人をからかっていました。

花魁たちは、紙すき職人のことを「冷やかし」という作業をすることから「冷やかし」と呼んでいたのです。

これが「冷やかし」の語源であり、「冷やかす」が「からかう」という意味になった由来でもあります。

吉原の花魁はなぜ紙すき職人を見分けられたのか?

吉原の花魁は、紙すき職人を見つけては、「冷やかして」いたわけですが、なぜ彼女たちは紙すき職人を見分けることができたのでしょうか。

お金を持ってなさそうな雰囲気?

職人らしい雰囲気?

実は彼女たちは、足元を見て、職人かどうかを判別していたのです。

江戸時代の吉原は、田んぼの真ん中にあり、吉原で遊ぶような金持ちは舟で吉原に行っていました。

ですから、足袋は汚れることなく白いまま。

一方の紙すき職人たちは舟に乗るお金もありませんから、田んぼの中を歩いて行きます。

足元は泥まみれになりますね。

その足元を見て、花魁たちは紙すき職人を見分けていたのです。

江戸時代に浅草周辺で和紙再生業が発達した理由

浅草で和紙の再生業が発達したのには2つの理由があります。

①隅田川の存在
②吉原は紙の一大消費地だった

①隅田川の存在

和紙を作るには水が必要です。

テレビなどで見たことがあると思いますが、下の動画のように、和紙を作る工程である「く」という作業は水がないと成り立ちません。


浅草には隅田川がありますから、水の供給が簡単だったんですね。

現在東京にお住まいの方にとっては、墨田川と聞くと「あんな汚い川で和紙を作っていたのか!」と思われるかもしれません。

しかし、明治時代の墨田川は透き通る清流だったのです。

当時の子供たちは墨田川で水遊びをしていました。

明治より前の江戸時代なら、墨田川はさらに綺麗だったことでしょう。

その清流で和紙を作っていたのです。

②吉原は紙の一大消費地だった

ご想像通り、吉原では大量のティッシュペーパーが必要でした。

吉原では大量の紙が消費されていたということです。

その屑カゴから紙屑を集める紙屑屋という人たちがいました。

集めた紙屑を職人に再生させて、吉原に売ることで、紙屑屋はかなり儲かる商売だったようです。

ちなみに、一般の人たちからすると、「不浄な紙」として忌み嫌われたとか。

紙屑屋もさぞ嫌われていたことでしょう。

冷やかすの類語

最初に「冷やかす」の意味をお伝えしましたが、ここでは「冷やかす」と同じ意味を持つ言葉を紹介します。

●からかう
●人を馬鹿にする
●面白半分
●お遊びで
●伊達や酔狂で
●悪ふざけで

このような類語があります。

「冷やかす」を使った例文

「冷やかす」を使った例文も最初に紹介しましたが、ここでは偉大な文豪である夏目漱石も「冷やかす」という言葉を使っていた事例を紹介します。

夏目漱石『坊っちゃん』より

十日に一遍ぐらいの割で喧嘩をしていた。ある時将棋をさしたら卑怯な待駒をして、人が困ると嬉しそうに冷やかした。あんまり腹が立ったから、手に在った飛車を眉間へ擲きつけてやった。

国語の教科書の定番のひとつ「坊ちゃん」の一節です。困った様子の坊ちゃんをからかったので、相手の眉間に飛車の駒を投げつける場面。ここでの「冷やかす」は「からかう」「バカにする」という意味ですね。

最後に

「冷やかす」の語源は意外なところにあったと感じた人も多かったのではないでしょうか。

あまり使われない言葉かと思いきや、かつての文豪も使っていたし、現在でも「赤川次郎」「東野圭吾」「宮部みゆき」と言ったベストセラー作家がその作品の中で使っています。

どうぞ、うんちくを傾けるためのトリビアとして頭の片隅に入れておいてください。